不入山は、四万十川源流の自然豊かなお山です。
四国百山、四国百名山。
高知県立四国カルスト自然公園区域内。
不入山は、その名を冠した不入山系に属します。
地質は、秩父帯に属する、中生代、中期〜後期ジュラ紀に形成された「付加体」です。
中生代は、2億100万年前~6600万年前。
そのうち、ジュラ紀は、2億100万年前~1億4500万年前です。
「付加体」とは、文字通り、日本列島(ユーラシア大陸プレート)に付加した地層です。
太平洋の海底で堆積した岩石は、フィリピン海プレートの移動に伴って移動します。
海洋プレートはやがて大陸プレートの下へと沈み込みます。
3億年前頃、海洋プレートの上層や海底堆積物が陸側に押し付けられ、削り取られました。
それらは変形し、固結、隆起などして、やがて陸地へと成長しました。
大陸プレート側に付加した地質体が、付加体です。
泥岩や千枚岩、砂岩、石灰質砂岩など、様々な種類の岩石が混在している混在岩が特徴です。
高知県は北部は秩父帯、南部は四万十帯という付加体でできています。
秩父帯は主にジュラ紀に、四万十帯は白亜紀から第三紀に付加しました。
砂岩などの柔らかい四万十帯は浸食作用を受けやすく、高知平野が代表的です。
不入山がある秩父帯は、岩石が硬く、浸食の影響も少ないため、急峻な山岳が形成されました。
不入山の山頂付近の岩石はチャートが、山麓は海成層の砂岩や後期ジュラ紀の混在岩が見られます。
登山道沿いには、白い石灰岩も点在しています。
チャートはホウサンチュウの、石灰岩はサンゴの、死骸が海底に堆積してできた岩石です。
不入山の少し南には、石灰岩層が浸食されてできた稲葉洞もあります。
2億2千万年前の巨大な二枚貝「メガロドン」の化石が見られます。
「不入」=「入らず」。
お山が土佐藩の「お留山」だったと言う説が有力です。
「お留山」とは、江戸時代、藩が管理・支配していた山林のことです。
訴訟沙汰が止むまで立入禁止となっているお山も、そう呼ばれていました。
お留山は、入山は元より、狩猟や伐採が禁止されていました。
留山が解除されると「明山」となります。
伐採が大きく制限されていたおかげで、老齢天然林が残っています。
不入山一帯の森林は国有林です。
農林水産省四国森林管理局四万十森林管理署が管理しています。
不入山周辺の約1000haの国有林のうち、 およそ三分のーが天然林です。
主な天然針葉樹は、ヒノキやケヤキ、ツガ、コウヤマキなど。
広葉樹は、ブナやアラカシ、ミズメ、ケヤキ、 カエデ、コナラなどです。
樹齢200年以上の天然木も多く見られます。
人工林は、50年から100年ほどのスギやヒノキが主です。
春に花咲くアケボノツツジやヒカゲツツジ、シャクナゲの群生も見事です。
「不入山風景林」とも呼ばれ、全国の国有林から選定した「憩いの森」に指定されています。
「レクリエーションの森」として広く開放されています。
約90%が山林で占められる津野町は温暖で、四国でも有数の多雨地域です。
不入山がある東津野地域の年間降水量は3414mmもあります。
(ちなみに、松山の年間降水量は約1300mmです。)
冬季は積雪も珍しくありません。
多雨で湿潤な環境が緑を育て、ふかふかな腐葉土は雨水をゆっくり川に戻します。
不入山には、清流・四万十川の源流点があります。
四万十川は、全長196km、四国最長の河川です。
登山道沿いに最初の1滴が生まれる場所があります。
ちなみに、「四万十川」は、平成6年(1994)まで「渡川」が正式名称でした。
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